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陽射しのようにあなたはやって来たのです
微笑みながら私を照らして行ったのです


生まれて初めて海を見た子供のように立ち尽くしていた
あの初恋の来た道で


あなたでなければみんなと一緒に行き過ぎた
愛した時からみんなと別れてひとりきり


あれが私の始まりでした 今もぼんやり陽の当たる
ほら、あそこです 初恋のいた場所は

さて今から8年前、もしかしたら7年前かもしれない。とにかく8年か7年前、私は人生の岐路に立っていた。それはインターネットができるパソコンを買おうと思い立ち、その問題を突き詰めていくと最終的にマッキントッシュを取るかウィンドウズを取るかの選択になっていて、つまりはiMac ボンダイブルー VS VAIO PCV-M350ということだった。iMacは最高に形がドープだ。色も当時としては珍しいスケルトン。おまけにマウスなんか見て下さい奥様!ボタンがひとつしかないし丸いんですよ!ただiMacはでかい。CRTだから。それにフロッピーが付いていない。別売りでUSB接続のドライブがあると聞いたがUSBなんて新参者のインターフェースは信用ならない。一方、VAIO PCV-M350はフロッピーディスクドライブ内蔵。当時としては珍しい液晶モニタ付き。液晶モニタなので当然コンパクト。おまけにマウスにボタンが2つ付いている。ということでVAIOをお買い上げ。それから8年後。私は東京都中央区銀座3-5-12 サヱグサビル本館の前で言葉を失い、圧倒され、感動して、嫉妬し、絶望の底からショーウィンドウを見つめていた。416週分の後悔を埋めるのはすごく簡単だ。ATMに行き70万円の現金を引き出す。そして赤いTシャツを着て天国の住人みたいな面構えをしているいけすかないあいつらの1人を捕まえてこう言えばいい。「パワーマックの1番速いやつと、シネマディスプレイのいちばんでかいやつをくれ。支払いは現金。持ち帰ったら足と腰と腕が壊れるから栃木まで送って欲しい」その後は400円のお釣りが来るはずだからそれでモスバーガーに寄ってモスキッズメニュー チキンやさいライスバーガーのセットを頼むと20円足りなくて死ね。人生はうまいこといかないもんだと銀座を歩きながら考えた。人生がうまいこといっていたら今頃は世界平和のために涙を流していたはずなのに。