仔犬ダンの物語

(2002年日本)澤井信一郎監督 モーニング娘。 ハロー!プロジェクト・キッズ 後藤真希
両親の不仲に嫌気が差した真生は両親別居の際にどちらにも付いてゆかず祖父の家がある群馬へと転校する。そこで目に障害を持つ捨て犬ダンと出会い様々な経験を経て成長していく。

映画の中で何か喋った小学生女子がいたならそれはハロー!プロジェクト・キッズであり、何か喋った中学生以上の若い女ならそれはモーニング娘。後藤真希である。そういう意味では分かりやすく記号的・象徴的な映画と言えるだろう。映画を観た人なら分かると思うが象徴的に杭は抜かれ象徴的に杭は打たれたのだ。
しかしエンディングのスタッフロールで流れるがんばっちゃえ!のPV(作り物の木の苗が雪に降られたり嵐に遭うのをモーニング娘。らが守り木が大きく成長するというストーリー)のほうが本編より映像的におもしろかったのはいかがなものかと思う。

仔犬ダンの物語を観ていて気になった点

群馬県勢多郡東村から栃木県栃木市へ貰われていったダンを追いかけて小学生女子が徒歩で、もう一人の小学生女子は自転車で移動するシーンがある。北関東在住者の私から言わせて貰うと小学生女子が自転車や徒歩で行ける距離ではない。東村から栃木市へ移動しようと思ったら電車でわたらせ渓谷鉄道からJR両毛線へ乗り継いで行くのがベストであろう。車だったら国道122号線から国道50号線を経由するのが最短ルートだと思う。ちなみにどちらも2時間は掛かるとみていい。車や電車で2時間かかる距離を小学生女子が歩いていったのだ。映画では場面展開もスムースに「ちょっと隣町まで小さな冒険」のように描かれており、距離感を示す描写は小学生女子が水辺に座り込み足を冷やしながら「道に迷って足も痛くなったの」というセリフと、ダンが貰われた家の主人が言う「子供が来れる距離じゃないぞ」の二つのみである。本当は大人だって来れない距離なのだ。
私は仔犬ダンの物語という映画について役者の演技を批判する気はまったくない。それは観客のターゲットを絞った映画であり彼女達がまだ幼いからである。彼女達は突出した才能を持ち合わせており同時に様々なものが欠けている。我々はすべてを含めてそれを好む。しかし長々と書いてきたまったくリアリティに欠ける設定は製作サイドの作り込みの甘さから出たものであり、極論を言えば北関東地域へ対する冒涜なのだ。なぜサッカーチームが練習していたグラウンドに「東村」の文字が見えたのか?なぜ小学生女子が道に迷い見た案内板に「Tochigi」と書かれていたのか?なぜ彼女らは電車を使わなかったのか?
ちなみに(私は割としつこい性格らしい)地図と定規で小学生女子が通ったと思われるルートを計ると約80kmあった。これを東京の新宿を拠点に置き換えてみると西は八王子、南は鎌倉までということになる。新宿から鎌倉に歩いていく小学生女子がいるだろうか?